ホラーミステリの傑作「刀城言耶シリーズ」の読む順番とかあらすじを語りたい

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刀城言耶シリーズとは、ホラーとミステリーが見事な融合を果たす三津田信三さんによるミステリシリーズ。

怪奇幻想作家・刀城言耶(とうじょうげんや)が、行く先々で起こる奇怪な事件を解決していく、というものである。

ポイントは、ホラー風のミステリでもミステリ風のホラーでもなく「ホラーミステリ」だというとこだ。この確立が素晴らしい。

普通こんなことをすれば、どちらも中途半端になりがちである。

しかし刀城言耶シリーズは、ミステリとホラーの両方がうまく合わさることによって、互いの面白さをより引き立たせているのである。

ミステリー小説好きにも、ホラー小説好きにもぜひオススメしたいシリーズなのだ。

1.『厭魅の如き憑くもの』


記念すべき第一弾にして名作。伝説の始まり、とでも言ったところだろう。

谺呀治(かがち)家と神櫛(かみぐし)家という2つの旧家が立ち並ぶ「神々櫛村」。憑きものや神隠しの噂が絶えない奇妙な村で、連続殺人は起きる。

まず注目すべきは舞台となる「神々櫛村」の奇妙さ。このジメッとした雰囲気だけでワクワクが止まらないのである。村の構築が見事にミステリに絡ませてくるとろもたまらない。

ミステリー小説としてのトリックや伏線も逸材であり、終盤に明かされた真実には本当に度肝を抜かれた。こんな騙しが楽しめるとは。

禍々しい風習、閉鎖的な村に憑き物筋の話。そんなホラーとミステリの融合は見事と言うしかない。

独特な世界観のため、最初は少しとっつきにくいかもしれない。でも安心してほしい。すぐにハマってしまうから。

2.『凶鳥の如き忌むもの』


舞台は昭和30年代。

鵺敷神社に伝わる「鳥人の儀」に参加するため、兜離の浦を訪れた刀城言耶は不思議な話を聞く。

18年前に鳥人の儀が行われた時、脱出不可能な拝殿から巫女が消失。さらに島にいた6人もの人間が行方不明になったという。

そして今回もまた、鳥人の儀の際に人間が消失してしまう。

そんな「人間消失の謎」挑む今作は前作よりホラーが抑えめでミステリ寄り。舞台となる島の構築も素晴らしい。

そして何より、明かされる真実の衝撃が凄まじい。「やられた!」「騙された!」とかではなく、ゾワッと鳥肌が立つようなオチ。恐ろしいが、非常に良くできている。こりゃたまらん。

3.『首無の如き祟るもの』


シリーズ3作目にして最高傑作と名高い作品。

私も刀城言耶シリーズは全部読んでいるが、やはり一番好きな作品である。

メインとなるのは「首の無い死体」。ミステリー小説では定番極まりない謎だが、三津田さんの手にかかれば予想をはるかに超えるものにしてくれる。

ホラーのテイストはしっかり残しつつも、本格ミステリーとして完全に確立した面白さを誇るのだ。

特にラスト数十ページの怒涛の展開がすごすぎる。あまりにひっくり返るため思わず笑ってしまったほどである。最後の最後なんて、もうね、言葉にならないよ。

こんなもの滅多に味わえるものではない。ミステリ好きならば読まなきゃ損である。

本当は一作目から順番に読んでいただきたいが、この作品だけ読んでも十分に楽しめる。もしシリーズを順番に読むのがめんどくさいという方は、せめてこの作品だけでも読んでほしい。

4.『山魔の如き嗤うもの』


山の中に響く赤ん坊の泣き声、山女郎と思える老婆の目撃、密室状態の家から消失した一家。

そんな奇妙な謎を聞いた刀城言耶は、現場となった奥戸へと向かう。しかし待っていたのは身の毛もよだつ殺人事件であり。

不気味だ。何も知らずに読み始めたら、本当にただのホラー小説かと思う。特に最初。

だがやはりこれはミステリ小説なのである。

童謡見立て殺人に一家消失、顔なし死体、密室。そして二転三転からのどんでん返し。驚かされるとわかっていても驚かされてしまうのだから、どうしようもない。

圧巻の解決編をご覧あれ。

前作の『首無の如き祟るもの』とどうしても比べられてしまいがちだが、今作だって間違いなく名作なのだ。

5.中短編集『密室の如き籠るもの』


シリーズ五作目にして初の中短編集。

凶器と犯人の消失、建物の消失、アリバイもの、密室、とバラエティ豊かな4編が収録されている。

長編作品と比べるとどうしても物足りなさを感じなくもないが(長編が面白すぎるのも問題である)、その分サクッと気軽に読めるものとなっている。

もちろんホラーとミステリの融合は健在であり、刀城言耶シリーズとして十分に面白い。特に表題作の中編『密室の如き籠るもの』は長編と同等レベルの素晴らしさである。

長編を読むのが大変!という方にもオススメ。シリーズが好きな方ならもちろん必読。

6.『水魑の如き沈むもの』


文庫にして750ページを超える非常に長い作品だが、しっかりとまとまっており無駄な部分がない。特に中盤以降は読む手が止まらなくなる。

近畿地方の山奥にある〈水魑様〉を祀る村。そこで行われいた儀式の最中、衆人環視の湖上の船という「密室」で殺人は起きる。

またしても閉鎖的で因習が残る村が舞台。この世界観だけでも読書欲がそそられる。

他にも魅力的な謎がたくさん登場するが、やはり注目すべきは水上密室の解明。そしてそれに繋がっていく伏線の細かさ。お見事と言うほかない。

終盤ではもう当たり前のように二転三転してくる。たとえその覚悟ができていても、驚かされてしまうのだ。

7.短編集『生霊の如き重るもの』


刀城言耶の学生の頃の事件を収めた短編集。

雪密室や人間消失など、ミステリ好きにはたまらない要素を含めたホラーミステリ5篇が収録。

短編ながら読み応え十分であり、シリーズの面白さをそのまま体感できる。

陰鬱な雰囲気は長編を比べればあっさりしているが、それでもゾクッとしてしまうシーンもちらほら。二転三転する展開もあったりと、ミステリとしてもクオリティも高い。

表題作はもちろん、雪の足跡問題をテーマとした『死霊の如き歩くもの』のまさかのトリックは注目。『顔無の如き覆うもの』のホラー感も良い。

どの話も最後に「怪異」を漂わせるものがあるため、奇妙な読後感が残る。この余韻が最高なのだ。

8.『幽女の如き怨むもの』


これまでのシリーズの中でも異質である。

がっつりなミステリとして読もうとすると、読後にモヤモヤが残ってしまうかもしれない。

だが刀城言耶シリーズとしての物語はすこぶる面白い。話の作り方がものすごくお上手なのだ。ミステリであることを忘れて夢中で読みふけってしまった。

今作では、異なる時代において遊郭で発生した連続身投げ事件と、そこに見え隠れする幽女という怪異を解決していく。

小説家の皆川博子さんも述べているが、身投げ事件と怪異現象を論理的に解決しておきながら、あえて解き明かさない謎を残すところが面白い。

そこはちょっと好みが分かれるかもしれないけれど、このパターンは一度味わってみていただきたい。ハマる人にはハマる。

読む順番について

刀城言耶シリーズは一つの作品で完結するため、順番に読まなくても十分に楽しめるものとなっている。

だが、個人的に順番に読むことをオススメしたい。全作が面白いからというのもあるが、登場人物のちょっとした繋がりなど、細部まで楽しめるようになるからである。

まあ問題は全くないんだけどね。あくまで個人的なオススメということで。

もしシリーズを全部読むのは大変!という方は、せめて三作目の『首無の如き祟るもの』だけでも読んでいただきたい。

そうすれば、結局全シリーズを読みたくなってしまうのだから。