【すべてがFになる】森博嗣「S&Mシリーズ」の順番やあらすじを語りたい

「S&Mシリーズ」とは森博嗣(もりひろし)さんのミステリシリーズの一つ。

一作目の『すべてがFになる』は、数多く存在する国内ミステリの中でもトップクラスの名作である。

主要人物となるのは、N大学工学部建築学科助教授・犀川創平(さいかわそうへい)と、その教え子・西之園萌絵(にしのそのもえ)。シリーズ名のSとMは、彼らのイニシャルからとっている。

私はこのコンビが大好きなのだが、意外にも西之園萌絵ちゃんを苦手な人が多いことにビックリした。特にアニメ版の西之園萌絵のキャラクターデザインはかなり好みである。

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あのウザさが良いのだよ!私もあんな子に振り回されてみたいものだ(でもやっぱり一番は真賀田四季)。

ドラマ化、アニメ化もされているので内容を知っている方もいると思うが、原作には映像と全く別の面白さがあるのでぜひ読もう。ドラマ、アニメを見ただけで「S&Mシリーズ」の素晴らしさを知った気になってはいけないのだ。

というわけで、ぜひご参考に。

1.『すべてがFになる』The Perfect Insider

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「S&Mシリーズ」の一作目にしてデビュー作。そして国内ミステリー小説においての名作である。

犀川創平、西之園萌絵を含めた大学の研究室メンバーが、とある孤島へと旅行に出かけた。そこには天才・真賀田四季(まがたしき)博士が在する研究所があり、興味津々な犀川&西之園ペアはその研究所へと向うことになる(私も行きたかった)。

が、そこでとんでもない殺人事件に巻き込まれてしまう。

なんと死体はウエディングドレスを身にまとっており、両手両足が切断されていたのだ。しかも殺害された現場が非常に複雑な密室であり、解決は困難を極める。

ラストで明らかになる壮大な密室トリックは「お見事」という他ない。ミステリ小説をまだ読みなれていない頃の私にはかなりの衝撃だった。

ミステリー小説が好きな方も、あまり読まない方も、もし未読であればぜひ優先的に読む事をオススメする。

2.『冷たい密室と博士たち』 Doctors in Isolated Room

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「極地環境研究センタ」に訪れた犀川&萌絵が、これまた奇妙な密室殺人に巻き込まれる。低温度実験室という特殊な部屋に隣接する準備室と搬入室で、二人の人間が殺されていたのだ。

一作目の『すべてがFになる』ほどのド派手さはないものの、確実で安定した面白さを誇る「正当派な本格ミステリ」という感じ。見取り図が載っているのもミステリ好きとしては嬉しい。

注目すべきはトリック、と言いたいところだが、個人的には犀川と萌絵の会話、その他登場人物とのやり取りがとても好きだ。なにげない会話の中にセンスが溢れかえっている。犀川先生のセリフがいちいちカッコ良いのだ。

だいたい、役に立たないものの方が楽しいじゃないか。音楽だって、芸術だって、何の役にも立たない。最も役に立たないということが、数学が一番人間的で純粋な学問である証拠です。人間だけが役に立たないことを考えるんですからね。

399ページより

これは、もし学生が「数学はなんの役に立つのか?」と聞いてきたらなんと答えるか、という問いに答えるシーン。かっこよすぎるね。いつか言ってみたい。

ちなみに執筆されたのは『すべてがFになる』よりこちらの方が先とのことなので、今作が事実上の処女作と言える。その点も考慮しながら読むとまた楽しい。

3.『笑わない数学者』Mathematical Goodbye

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天才数学者・天王寺翔蔵(てんのうじしょうぞう)博士の住む「三ツ星館」で行なわれていたパーティーの最中、博士は庭に佇む巨大なオリオン像を消失させた。

再びオリオン像が姿を現した時、なんと二つの死体まで現れてしまった。というわけで犀川たちは「オリオン像の消失」と「殺人事件」の両方の謎を解決していくこととなる。

謎ももちろん素晴らしいのだが、このシリーズは相変わらず登場人物のキャラが良い。今作は天才数学者・天王寺翔蔵が非常に魅力的であるので、犀川創平とのやり取りなどにもぜひ注目して読んでいただきたい。

犀川と天王寺翔蔵博士のセリフがいちいちカッコイイのだ。S&Mシリーズはまさに「名言の宝石箱」である。

それにしても『笑わない数学者』 Mathematical Goodbyeというタイトルは本当に美しい。作品を読んでいただければ、この意味がお分かりいただけるはずだろう。

4.『詩的私的ジャック』Jack the Poetical Private

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大学内で女子大生が連続して殺された。現場は密室であり、二つの死体には文字のような傷が残されていた。

メインとなるのは「なぜ、わざわざ密室にしたのか?」という謎。つまりホワイダニットなわけだが、ここにさらに「なぜ、犯人は二人とも同じような方法で殺害したのか」というホワイが加わることとなる。

二人とも同じように殺したということは、犯人は同一人物ですよ、と言っているようなものである。

非常にオーソドックスなミステリながら理系色が強めであり、森さんの作品らしさを堪能できるのも嬉しい。さらにタイトルに「詩的」とあるように、内容も他の作品と比べてかなり「詩的」なのもポイントだ。

このシリーズはミステリ的な部分はもちろん、犀川&萌絵を含めた登場人物たちの関係や会話を楽しむものである。事件の真相だけに気を取られるのではなく、じっくりと彼らのやり取りを堪能しよう。そして名言をメモしよう。

シリーズ4作目となると、ミステリより「犀川と萌絵が今後どうなっていくのか」が気になって仕方がなくなってくるはずだ。なのでどんどん続きを読んでしまう。止まらない。これぞシリーズ小説の醍醐味なのだ。

5.『封印再度』Who Inside

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とある旧家に伝わる「天地の瓢」という壺と「無我の匣」という箱がある。

「無我の匣」には鍵がかけられており、「天地の瓢」にはその鍵が入っている。

しかし、その鍵は「瓢」の口よりも大きく、取り出すことが出来ない。しかも鍵を「天地の瓢」に入れたという香山風采は、50年も前に密室で謎の死を遂げている。

一体どうやって、壺の口より大きい鍵を取り出すのか。

これが序盤に出てくる謎なのだが、すでにめちゃくちゃ面白い。一気に引き込まれてしまう。

しかも舞台が旧家ということもあってか、どこか乱歩の〈金田一耕助シリーズ〉や京極夏彦さんの〈百鬼夜行シリーズ〉っぽい雰囲気が漂っているのがとても好みだ。

これ以降も様々な謎が出てきて引き込まれるのだが、もはやそんなのどうだっていいくらいに犀川&萌絵のやり取りに目がいってしまう。もはやラブストーリーを読んでいるようでニヤニヤしてしまうのだ。

そして相変わらずのタイトルの美しさである。『封印再度(ふういんさいど) Who Inside(フーインサイド)』。ああ、しびれる。

6.『幻惑の死と使途』Illusion Acts Like Magic

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「どんな密室からも抜け出してみせよう!」でおなじみ(?)の天才奇術師・有里匠幻が、脱出ショーの最中に殺害された。

衆人環視での殺人事件というだけでも面白いのだが、さらに葬儀中に有里匠幻の遺体が消失してしまったのである。死体となっても彼は脱出を披露して見せたのだ。

ミステリとマジックの見事な融合をみせる今作は、私的にS&Mシリーズの中でもかなりの名作だと強う思う。

さらに面白いのは、この作品には「奇数章しか存在しない」ということだ。

実はこの『幻惑の死と使途』は、次作『夏のレプリカ』と同じ時期に起きた事件を描いている。つまり次作『夏のレプリカ』では偶数章しか存在せず、それぞれの事件が同時期に起こったことを示している。

かといって「両方を交互に読め」ということではなく、それぞれ1巻づつ読んで問題はない。だが、やはり『幻惑の死と使途』を読んだらなるべく間を空けずに『夏のレプリカ』に取り掛かった方が楽しめるだろう。

7.『夏のレプリカ』Replaceable Summer

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萌絵の親友である簑沢杜萌(みのさわともえ)が家族もろとも誘拐された。結局、別の場所で拉致されていた家族と再会できたが、犯人グループの二人が死んでおり、なぜか兄が行方不明となっていた。

上でご紹介したように、『幻惑の死と使途』と同時期に起きた事件を描いた「偶数章しかない」作品である。そのため犀川&萌絵の出番は少なく、ある意味「番外編」のような印象を受ける。

一作目『すべてがFになる』で真賀田四季博士は「7は孤独な数字」と言っていたが、この作品がシリーズ7作目ということに関係しているのだろうか。

ミステリとしても派手な展開などもないが、純粋に物語が面白い。特に物語の終盤、萌絵と杜萌がチェスをするシーンが最高に好きである。このシーンだけを何回も読み直したほどだ。

ぜひ『幻惑の死と使途』と続けて読んでしまおう。

8.『今はもうない』Switch Back

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この作品がシリーズ最高傑作だ、という方も多い。それほどの名作である。

とある山荘で、美人姉妹がそれぞれ別々の「密室」で殺された。しかも嵐によって外部との連絡が絶たれてしまう、という王道の舞台設定にワクワクが止まらない今作。

基本的にS&Mシリーズはミステリー小説というより「登場人物が魅力的なシリーズ小説」として読んでいたのだが、この作品は純粋にミステリー小説として面白い。「おおお!」と言わせてくれる見事な真相であった。

最大限に楽しむために、①これまでのシリーズ作品を順番に読んでいること、②なるべく予備知識ゼロの状態で読むこと、が必要条件となる。

9.『数奇にして模型』Numerical Models

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同時に起きた二つの密室殺人。しかも一つは首なし死体であり、同じ部屋で大学院生・寺林高司が倒れていた。しかも彼はもう一つの密室殺人の容疑者でもあった。

どう考えても怪しい彼だが、本当に犯人なのだろうか。

ミステリとしても面白いが、やはり今作でも「物語」と「キャラクター」が最大の見所だろう。文庫にして700ページ超えの長編ながら、エンターテイメント性がかなり強いため、楽しく一気に読むことができた。

萌絵ちゃんのコスプレ姿を妄想してニヤニヤしていたのは私だけではないだろう。

まさに『数奇にして模型』というタイトルにふさわしい内容。

常識と非常識の違いは。狂気とは、正気とは。

非常に考えさせられる作品でもあった。

10.『有限と微小のパン』The Perfect Outsider

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とうとうS&Mシリーズの最終巻である。文庫にして約870ページという大作だが、これで終わりとなってしまうと悲しすぎる。

テーマパークを訪れた萌絵たちは、そこで「死体消失」という奇妙な事件に出会う。つい先ほどまであった死体が、目を離した隙に片腕だけ残して消えてしまったのだ。

なんとも奇妙な事件だが、初っ端からあの人物が登場するので、ミステリなんてどうでもよくなっちゃうほど物語にのめり込んでしまう事になる。

こういう展開があるからシリーズ作品って良いね。

ネタバレになってしまうので多くは語れないが、これまでの作品を順番に読んできたならばとても楽しめる内容になっていることは間違いない。かなり「ファン向け」の作品だと言えるだろう。

森博嗣さんの描く「天才」の姿はやはり美しく、カッコイイ。今作においても数々の名言が登場するので、ぜひ目にしていただきたい。

「通常、不可解な行為にも、必ず何かの意味がある、という前提で推理が行われる。  君の仮説にしても、ガラスが割られた理由、腕が残されていた理由に、意味を見つけようとしている。  それが間違いかもしれない。そもそも、意味はない。  意味がないことを目的に、行われた行為なんだ、と考える。  そうしてみれば、不思議なことは何一つない」

 「意味のないことをする、ということ自体が既に不思議です」 

 「いや、それは錯覚だ。意味のないことを面白い、やる価値がある、と考えるのが人間の高尚さじゃないか」

348ページより


「人間のほとんどは馬鹿です」

犀川は立ちあがりながら微笑んだ。 

「僕の試算では、九十四パーセント。ただし、忘れないでください。馬鹿は、悪いことではない。低いことでもない。  卑しいことでもありません。死んでいる人間は、生きている人間より馬鹿ですし、寝ている人間は、起きている人間よりも馬鹿です。  止まっているエンジンは、回転しているエンジンよりも馬鹿です。 それが馬鹿の概念です」

425ページより


こんなセリフをさらっと言える人間になってみたいものだ(私が言ったら、ただのイタい奴としか思われないだろう)。


おわりに

以上が「S&Mシリーズ」の読む順番となる。

順番に読むか否かで面白さが変わってきてしまうので、間違えないように気をつけよう。


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