『消人屋敷の殺人』感想-深木章子さんの「嵐の山荘」モノは一味も二味も違かった

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『鬼畜の家』を読んでから深木章子さんにハマっているが、まさかこんな本格モノを書いてくれるなんて。

ああ、感謝。

覆面作家の館で次々と人が消える。屋敷に集められた男女、嵐が生み出す巨大密室、不可能な「人間消失」。読者を挑発する、大胆不敵な本格ミステリ!

結論から言えば、深木作品の中でも特に優れた作品だった。

嵐の山荘ものがお好きであれば、一読の価値アリである。

深木章子『消人屋敷の殺人』


日影一族の棟梁・日影秋水の住居だった「日影荘」は、古くから「消人屋敷」とも呼ばれていた。

邸内に逃げ込んだ二十人近くの反乱軍が煙のように消失してしまった、という噂があるからだ。

日影壮に入った所は目撃されているのに、出て行く姿が全く目撃されなかったのだ。

当時の技術を考えてみても、20人近くの人間が長時間隠れるような場所を作れるとは思えない。

数週間に渡って監視されていたが、結局死体は発見されなかった。

さらに「空を飛ぶ男」をの目撃証言や、忍者屋敷のような「からくり」があるんじゃないかとの噂もあった。

幸田真由里様

非常に重要な件でお話があります

九月二十日の午後二時に日影荘までおいでください

微妙な問題が絡んでいます 他言は無用に願いします

『消人屋敷の殺人』50ページより引用

そんな「消人屋敷」に来てくれと、招待状を受けた三人の人物がやってくる。

そこにタイミングよく土砂崩れが発生し、さらには何者かの手によって電話線が切断され、消人屋敷は完全なクローズドサークルになってしまう。

そしてなんということか、皆が混乱する中、一人の家政婦が突然と「消失」してしまうのだった……。

これが深木さんの「嵐の山荘」

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大勢の人間が消失した屋敷、招待状によって集められた男女、土砂崩れによって引き起こされた「嵐の山荘」、皆の眼の前で消失する家政婦。

典型的なクローズドサークルである。

恐ろしいほどに、好きなキーワードしか出てこない。

これで面白くないわけがない。

「騙される」と評判を聞いていたので、覚悟して読んだが、なるほど。これは騙される。

見た目は完璧なまでに王道本格館モノであるので、どんなトリックを使ってくるのかとワクワクしていたが、「そうきたか!」という後味だった。

良い意味で深木章子さんらしいトリックが炸裂している。

いやはや、このパターンのトリックは何回かおみまいされているのだが、なぜか気がつくことができなかった。これも深木さんの巧さか。

メインとなるトリックには当然驚かされたし、サブ的な謎の真相もなかなか。空飛ぶ男の真相は笑った。

特にストーリー終盤はまさかの展開にはついニヤリ。トリックだけでなく、物語そのものを楽しませてくれるのも深木さんの魅力である。

ガチガチの舞台設定ではあるが、文章はとても読みやすく、2時間ほどで一気読みできた。

クローズドサークルや館モノが好きな方にはぜひ、一筋縄にはいかない深木トリックを味わってみてほしい。