これが「本物」。澤村伊智さんの新作『恐怖小説 キリカ』は本当にやばいヤツでした

f:id:anpo1012:20170218144231j:plain

ホラー作家・澤村伊智(さわむらいち)さんの3作目『恐怖小説 キリカ』が発売した。

デビュー作『ぼぎわんが、来る』、2作目の『ずうのめ人形』のどちらも面白かったので非常に期待していた今作。

それだけにハードルが高かったのだが、見事に期待を超えてきた。めっちゃ怖いのである。

しかも帯には「スティーヴン・キングの傑作『ミザリー』に挑戦した」とある。スティーヴン・キング好きとしてはこれは読まざるをえない。

※『ミザリー』は、人間の恐怖を描いたキングの傑作ホラー小説。事故で骨折した人気作家ポールが、やばい女に監禁される物語です。本当に面白いホラーですので、未読な方はぜひ☆


『恐怖小説 キリカ』のあらすじ


①主人公は澤村伊智(本名:香川隼樹)。小説を書いて皆で批評し合う「小説を書くぞ会」メンバーの一人であり、現在は嫁の霧香と二人で暮らしている。

②そんな香川がある日、『ぼぎわん』というホラー小説で日本ホラー小説大賞を受賞する。自分のことのように喜ぶ霧香と「小説を書くぞ会」の仲間たち。

③しかし、そんな香川を祝う「小説を書くぞ会」の飲み会で、メンバーの一人の副島が「この『ぼぎわん』という小説の内容は、離婚した元嫁への報復だ」などと言い始める。もちろん香川にそんなつもりは一切なかった。

④さらに数日後、『ぼぎわん』の原稿がその元嫁の元に届いたという連絡が入った。差出人は「香川隼樹」となっているそうだ。もちろん自分は出していない。

⑤明らかに副島が怪しいので、後日問い詰める香川。すると副島はとんでもないことを言い出した……。

という感じ。


「人間」がやばいタイプのホラー

今作『恐怖小説 キリカ』は幽霊や呪いなどではなく、いわゆる「人間が一番怖い」と思わせてくれるホラー小説である。

人間の怖さを描いたホラー小説といえば貴志祐介さんの傑作『黒い家』などがあるが、正直『恐怖小説 キリカ』はそれに劣らないほどの怖さを描ききっている。

さらに、この作品の怖さを際立たせる要素がある。それが「リアルさ」だ。

この物語、主人公の澤村伊智が『ぼぎわん』で日本ホラー小説大賞を受賞したことから始まるのだが、これは紛れもない事実なのだ。

その後『ぼぎわん』が出版されるまでの細かい打ち合わせなどのほか、2作目『ずうのめ人形』の執筆過程も描かれている。さらに審査員である綾辻行人さんや貴志祐介さんの名前も登場するなど、まるで「ノンフィクション」を読んでいるような感覚に落ちいるのだ。

絶妙に事実を織り交ぜることにより、フィクションとノンフィクションの境界線が完全に消滅するのである。

なので読んでいるうちに、「え、これ、小説だよね?まさか、ほんとの事じゃないよね?」とワケがわからなくなってくる。これが怖い。そして面白いのだ。


エンターテインメント性も抜群

f:id:anpo1012:20170218145059j:plain

さらにこの作品は全3章からなる構成にもこだわっており、とにかく「楽しませてくれる」ホラー小説なのだ。怖いのに、ページをめくる手は加速する一方なのである。

一章を読んで「うおお」となり、二章を読んで「え?!」っとなり、三章を読んで「うわあああ!」となった。「あとがき」も含め、最後の最後まで読者を恐怖の底に陥れてくれるのだ。

しかも途中かなりグロいシーンがある。グロいのが好きな私でもちょっと「ちょっと勘弁してよ」と思った。が、決してグロさに頼った作品ではないので安心してほしい。しっかりと「怖い」のだから。

後味に関しては「最悪」と言うより、帯に書いてある貴志さんのコメント通り「本物を読んでしまった」感がすごい。「やばい」と思った。だが、このタイプの作品は個人的にも大好きなのだ!このようなホラー小説に出会えたことに感謝したいくらいだ。

ぜひあなたにも、この特別な恐怖を味わっていただきたい。数あるホラー小説の中でもかなりオススメしたい作品の一つである。