静けさと狂気。赤川次郎『黒い森の記憶』はサスペンス小説の傑作である

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赤川次郎さんの最高傑作といえば『マリオネットの罠』だ!という声も多いだろう。確かに私もそう思う。

しかし、この『黒い森の記憶』という作品も決して忘れてはいけない。

赤川次郎さんの最高傑作は?と聞かれたら、私は『マリオネットの罠』か『黒い森の記憶』で三日三晩は悩む。

なぜ選べないかというと、ずばり「タイプが違う」からである。

ミステリ要素が強めの『マリオネットの罠』に対し、『黒い森の記憶』はサスペンス色が強い。

何が言いたいのかというと、とぢらの作品もミステリーやサスペンスがお好きな方にはぜひおすすめしたいのだ。

『黒い森の記憶』5行でわかるあらすじ


①舞台となるのは、深い森の中にある一つの山荘。そこには一人の老人がひっそりと暮らしている。

②外界では、謎の少女暴行殺人事件が発生していた。

③そんなある日、老人の元へ奇妙なプレゼントが届くようになる。謎の人形、お手玉、そして、、、。

④さらに老人の元に、逃亡中の少女暴行殺人事件の容疑者が乗り込んでくる。

⑤そして老人と容疑者の奇妙な共同生活が始まっていく。

という感じである。

もう面白い。

きになる謎が目白押しなのだ。

1.なぜ老人はひっそりと暮らしているのか?

かつて医師だった老人が、たったひとりの娘とも会おうとしないのはなぜなのか。

2.奇妙な贈り物

老人の元に届けられる贈り物の意味は何なのか。犯人は。その目的は。

3.容疑者との生活

老人は殺人事件の容疑者をなぜ受け入れたのか。この共同生活の行方は。

圧倒的読みやすさ。

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これは赤川次郎さんの作品全般に言えることだが、めちゃくちゃ読みやすい。

古い作品特有の読みにくさ、というものがまったくないのである。

しかも内容はハラハラドキドキのサスペンス。

気になる謎が絡み合い、先が気になってしまって仕方がないのだ。退屈させてくれるところなんてどこにもない。トイレに行く隙もない。

ページ数も文庫で300ページもないので、躊躇することなく手に取ることができる。

しかも「登場人物が少ない」というのもありがたい。

ということはつまり「一気読み」である。

静かなる狂気

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この作品の好きなところは「静けさ」にある。

暗い森の中に佇む山荘。一人で住む老人。奇妙な贈り物。

一見穏やかなように思えるが、老人の周りでは確実に狂気が渦巻いている。このじわじわと忍び寄る不穏な空気がたまらなくゾクゾクするのだ。

特に終盤の二転三転する展開は大いに楽しんでいただけることだろう。

いつものような赤川次郎さんらしいユーモアさなんてどこにもない。

この狂気を最大限に楽しむためにも、シーン・・・とした夜中にひっそりと読むことをおすすめしたいのだ。

おわりに

というわけで、赤川次郎さんの作品の中でも特に好きな『黒い森の記憶』をご紹介させていただいた。

ハラハラドキドキしちゃうサスペンス物がお好きならぜひ読んでみていただきたい。