辻村深月さんの『かがみの孤城』が『スロウハイツの神様』並みの傑作だった

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初めて『スロウハイツの神様』という作品を読んで、わたしは辻村深月さんのファンになった。

それ以来、辻村さんの作品はすべて読んでいる。

『冷たい校舎の時は止まる』などの作品ももちろん大好きなのだが、『スロウハイツの神様』が好きすぎるあまり、『スロウハイツの神様』を超える辻村作品には今まで出会うことが出来なかった。

スロウハイツの神様(上) (講談社文庫)

スロウハイツの神様(上) (講談社文庫)


「もう『スロウハイツの神様』を超える辻村作品には出会えないのかもしれない。」


そのように感じていた今日この頃だったが、先日2017年5月11日に発売された『かがみの孤城』が『スロウハイツの神様』と同じレベルで傑作だった。

これは大事件である。

辻村さんの初期の頃、『冷たい校舎の時は止まる』『子どもたちは夜と遊ぶ』『ぼくのメジャースプーン』『スロウハイツの神様』辺りの作品が好きな方にはたまらない作品となっているはずだ。

まずは、あらすじだけでも簡単に見ていっていただきたい。

奇妙な城に集められた、孤独な七人


物語の中心となるのは、中学校でイジメに会い学校に通えなくなってしまった安西こころ。

ある日、こころが部屋に引きこもっていると、鏡が突然、光りだしたのだ。

不思議に思って手を伸ばすと、こころはアッというまに鏡の中に吸い込まれてしまった。


気がつくと、目の前には「狼のお面」をかぶった少女が立っている。

彼女は言った。

「安西こころさん。あなたは、めでたくこの城のゲストに招かれましたー!」

唖然とするこころの目の前で、城の鉄格子の門が開く、ゆっくりとした音が聞こえた。

31ページより

城の中を見渡してみると、すでに二人の女の子と四人の男の子がいた。

どうやら彼女たちも、鏡の中に吸い込まれてこの城に来たらしい。

さらに狼の面をかぶった少女は言う。

「お前たちには今日から三月まで、この城の中で”願いの部屋”に入る鍵探しをしてもらう。見つけたヤツ一人だけが、扉を開けて願いを叶える権利がある。つまりは、”願いの鍵”探しだ。ーー理解したか?」

43ページより

どうやらこころたちは城のどこかに隠されている、願いが叶えられる「鍵」を探すために、城に集められたのだという。

願いをなんでも叶えてくれる。なんと素敵なことだろう。


しかし、これには幾つかのルールがあるらしい。

1.願いを叶えられるのは一人だけ。

2.城に来れるのは、朝九時から夕方五時まで。

3.期限は三月三十日まで。それまでに鍵を見つけ出せなかったら、城は消滅。もう来ることはできない。

4.ここに来ることができるのは、こころたち七人のみ。

5.ルールを守るならば、基本的に何をしてもオーケー。食事やお菓子、ゲームなどの持ち込みも可。

しかし、もしルールを破った場合は、狼に食われる、という。


あらすじを整理しよう。

簡単に言えば、学校に通えなくなってしまったこころを含めた七人の中学生が、鏡の中にある城で「願いの叶う鍵」を探す、という物語である。

一見、よくあるような、どこかで読んだことのあるようなファンタジー小説のように思える。

だが辻村深月さんの手にかかれば、よくあるファンタジーではなくなるのだ。こんな物語、辻村深月さん意外に誰がかけるというのか。

わたしの好きな、あの頃の辻村深月さんだった

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わたしが辻村作品の好きな部分をあげたらキリがないが、大きく分ければ二つある。

1.辻村さんが描く「登場人物」。

2.序盤から中盤までに散りばめられた謎や伏線を、残りわずかの終盤で「グワアアアア!」と一気に回収してく怒涛の展開。

である。

今作『かがみの孤城』では、わたしの好きなその二つのポイントが完璧に描かれていた。

『冷たい校舎の時は止まる』にしろ『スロウハイツの神様』にしろ、複数の少年少女(若者たち)が話の中心となるのだが、読み終わった後は彼らのことのみんな大好きになってしまうようになっている。

それは今作でも同じだった。

とにかく、「優しい」のだ。「あたたかい」のだ。辻村さんは「嫌なヤツに見えて実はいいヤツ」の描き方が本当にお上手だ。

そして終盤の、あの畳み掛けるような展開にもお手上げだった。気がつけば、涙していたのだ。

・誰が願いを叶えられるのか。

・なぜ、城に集められたのかこころたち七人だったのか。

・なぜ、こんな城が作られたのか。

・鍵はどこにあるのか。

他にもあらゆる謎が散りばめられているのだが、それらの真相を一気に明らかにしていく過程が本当にたまらなかった。見事としか言いようがなかった。

特に、最後の最後のあの真相には不覚にも超泣いてしまった。早く続きを読みたかったのに、一時中断せざるをえなかった。

おわりに

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改めて言わせていただくが、わたしは辻村深月さんの作品が本当に大好きである。

しかし細かく言うと、大変失礼かもしれないが、「初期の頃」の辻村作品が特に大好きだった(冷たい校舎の時は止まる、子どもたちは夜と遊ぶ、凍りのくじら、ぼくのメジャースプーン、スロウハイツの神様、名前探しの放課後、辺り)。

そして『かがみの孤城』を読んだとき、思った。

あの頃の辻村深月さんが帰ってきた、と。

これこそ、わたしが読みたかった辻村深月さんの作品だ、と。

わたし自身まさかここにきて、わたしの中の永遠の一位『スロウハイツの神様』と肩を並べる作品に出会えると思っていなかった。

これからも、わたしはずっと辻村深月さんの作品を読み続けるだろう。

「最初の頃は読んでたけど、最近は辻村さんの作品読んでないなあ」という方や、そもそも辻村深月さんの作品をほとんど読んだことがない方にこそ、この『かがみの孤城』という作品を胸を張ってオススメする。

これこそ、辻村深月さんの真骨頂なのだ。

この作品を面白くないと思われてしまっては、もうお手上げである。