アガサ・クリスティのおすすめ名作18選〜これだけは読んでおきたい傑作集〜

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「アガサ・クリスティの作品ってどれが面白いの?」という質問に答えるのは簡単である。

なぜなら「全部だよ」と言えばいいのだから。

これは、超一流のシェフが作る料理店に行き「どれが美味しいの?」と聞いているようなものだ。好き嫌いはあれど基本的に全部美味しいに決まっているのである。

しかし「どれがオススメなの?」と言われると難しい。

人によって好みがあるのはもちろん、一部の作品が面白すぎるため、その他の「普通に面白い作品」が「クリスティにしては微妙だな」と事態になってしまうのだ。面白すぎる作品があるというのも罪である。

というわけで今回は、アガサ・クリスティの作品をまだあまり読んだことがない方へ向けて「まずはこの辺りの作品をおすすめするよ!」という傑作を厳選させていただいた。

クリスティ作品の中で「特に面白い」ものばかりである。

〈18選〉って全然厳選してないじゃん!と思われるかもしれないが、どう頑張ってもこれ以上絞れないのだ。それほどに面白い作品が多いわけである。

もしこの中で読んでいない作品があれば、ぜひ優先的に読んでいただきたい。

1.『スタイルズ荘の怪事件』ポワロ


アガサ・クリスティのデビュー作であり、探偵エルキュール・ポアロの初登場作品。

つまりポワロシリーズの一作目ということであり、「必読」という意味である。

クリスティにしては非常にシンプルな内容でありながら、綺麗な伏線の敷き方や二転三転する展開も楽しめる本格ミステリとなっている。

ではクリスティ作品の中で一番面白いのか?と聞かれれば「違う」と答える。この作品が面白くないのではなく、他の作品が面白すぎるのだ。

この作品で感じていただきたいのは、「ミステリー小説の面白さ」というより「アガサ・クリスティの面白さ」。ミステリー云々の前に、一つの〈小説〉として楽しんでいただきたいのだ。

デビューの頃からクリスティはクリスティしてるんだ。

2.『オリエント急行の殺人』ポワロ


大雪のため立ち往生となった「オリエント急行」の中で殺人は起きた。

しかし、12名もの容疑者がいながら全員にアリバイがあったのだ。

初めて読んだ時の「そういうのアリなの?!」という衝撃は今も忘れない。ミステリを読みなれていない頃に出会っていて本当に良かった。

「まさかの犯人」で有名なため〈あの衝撃〉だけに目が行きがちだが、その真実へ導くためのポアロの論理的推理にも注目していただきたい。

一つ一つのピースを「パチッ。カチッ。」と丁寧にはめていくようなあの感覚。パズルを完成させていく時のような、少しずつ事件の全貌が見えてくるあの気持ち良さ。

うーん、ビューティフォー。

クリスティの作品は有名すぎるがゆえに「小説を読んでいなくても真相を知ってしまっている」という場合が非常に多い。このオリエント急行も何度も映像化されている。

つまり、もし今のあなたが「小説も読んでいないし真相も知らない」という状態なのなら、それは最高に喜ぶべき奇跡である。ネタバレに遭遇する前に読んでしまおう。

3.『アクロイド殺し』ポワロ


あるトリックを使用した歴史的傑作である。

村の名士であるアクロイド氏が殺害され、その村にちょうど引っ越してきたポアロが事件解決に挑む。

これ以上は何を書いてもネタバレにつながってしまうような作品であるため、他の書評などを出来る限り見ないですぐに読むべきである。『オリエント急行の殺人』と同じく、ネタバレに遭遇する前にさっさと読むのがベストなのだ。

初めて読んだ時は「そんなのアリィ?!」と心の中で叫んでしまったほどの真相だったが、現代のミステリー小説を読みなれてしまうとその衝撃度は下がってしまうのかもしれない。

だが、たとえ犯人がわかっていた上で読み返してみても、ミスリード巧さと伏線の忍ばせ方に惚れ惚れしてしまうほどの完成度を誇る。うまい。とにかく上手い。

しかもコレを1926年にやってのけた、という事実こそがなによりも凄いのだ。もし私が発表された当時に読んでいたら失神していただろう。

4.『ナイルに死す』ポワロ


クリスティといえば「ミステリ作家」として凄い人、というイメージを覆した作品。

彼女は「ミステリ」など関係なしに素晴らしい「作家」であった。

読ませる物語、とでもいうのか。本格ミステリと人間ドラマの融合が見事であり、文庫にして600ページ近くもある長編なのだがほぼ一気読みさせられてしまうのだ。いったい、人の睡眠時間をどれだけ減らせば気がすむのだろう。

たとえトリックも犯人も分かっていようとも、それでも何度でも読みたいと思わせてくれる魅力があるのだ。物語、構成、人物、情景描写、その全てが素晴らしい。

とにかく「クリスティの魅力」というものがたっぷり詰まった傑作なのである。

ただ、いますぐエジプト旅行に行きたい!という衝動にかられるので注意しよう(私だけ?)。

5.『葬儀を終えて』ポワロ


クリスティの後期作品の中で屈指の面白さを誇る傑作。

大富豪リチャードの葬儀が終わった後、末の妹のコーラが何気なく発した言葉。

「だって、リチャードは殺されたんでしょう?」

翌日、コーラは死体となって発見された。

まず掴みが完璧すぎる。この魅力的な一言を筆頭にグッと物語へ引き込ませ、そのまま引っ張って最後まで読ませる筆力。ああ、うっとり。

さらに伏線の忍ばせ方に加えミスリードの巧さがまぶしいくらいに光る。こんなの面白すぎるわ。

とにかく「うまい」のだ。読めばすぐに分かる。「クリスティってやっぱり天才なんだ」ってなる。

クリスティ作品の中でも「やられた!」という衝撃が強め。

6.『ABC殺人事件』ポワロ


全く関係ないと思われる被害者たちの関係を探っていく〈ミッシング・リング(失われた環)〉ものの名作。

クリスティ作品を読んだことはないけどタイトル名は知っている、という方も多いだろう。それほどに有名であり、面白い作品である。まず読んでおいて間違いはない。

A、B、Cのアルファベットに関連して殺人が起きる、という設定はやはりワクワクするものだ。

なんでわざわざそんな事するの?という理由はともかく、現実世界ではありえないような殺人事件を楽しめるのが小説の魅力だよね。

クリスティ作品の中でもかなり読みやすい方だし、ストーリーのテンポも良いし、純粋に読んでいて楽しいミステリ小説なのだ。

7.『五匹の子豚』ポワロ


過去の事件を、当時関係者のわずかな証言や回想のみで解決していく、という「回想の殺人」と呼ばれるジャンルの作品。

今作では16年前の殺人事件を、わずか5人の容疑者の証言によって解決へと導いていく。

私はこれを読んで「回想の殺人」というものにハマった。こんな面白いの読んじゃったら絶対ハマるよ。

回想の殺人が面白いのは、同じ事件だとしても「視点の違い」によって解釈が全く変わってくるってところ。コレを見て欲しいのだよ。

キャラクターのかき分けもクリスティらしくて読みやすいし、トリックもさることながら「読ませる」ストーリーがすごく好きだ。

そして浮かび上がる驚愕の真実。完璧じゃあないか。

8.『杉の柩』ポワロ


ポアロ18作目の長編。何より人間描写が魅力的な名作である。

全三部からなっており、一部では人間関係と殺人の発生を描き、二部でポアロの捜査、三部で解決編となる。

どう考えてもこの人物が怪しい、と思われる事件をポアロはどう推理していくのか。

クリスティはミステリとラブストーリーの融合を見事に魅せる作家と言われているが、今作でもそれは大いに発揮されている。

主役となる女性への感情移入のさせ方、ストーリーの読ませ方、巧みな人物描写は「完璧」と言えるほど。

特に好きなのはこの終わり方だよ!こりゃたまんないねえ!

9.『白昼の悪魔』ポワロ


避暑地としても有名なリゾート地で、元女優が殺害されてしまう。しかし容疑者には完璧なアリバイがあり……。

伏線の忍ばせ方と回収、巧みな人間描写、大胆かつキレの良いトリック、意外性のある真相。どれをとっても一級品である。

作品としては満点の面白さなのだが、この(ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)のものは翻訳があまりよくないと言われている。

事実、読んでみると確かに違和感はある。クリスティ作品のファンであればあるほど、翻訳が気になってしまうだろう。なんというか、キャラと雰囲気にあっていないのだ。

しかし逆に言えば、クリスティ作品をそんなに読み慣れていないならあまり違和感は感じないはず。むしろ「読みやすい」と思えるかもしれない。

というように少々翻訳にクセはあるが、間違いなく屈指の名作なので読むことをオススメするよ。

10.『ホロー荘の殺人』ポアロ


ホロー荘に親族が集まっていて、ポアロが行ったらプールで殺人事件が起きていた。

初めて読んだ小学生の時は面白さが全くわからなかったが、大人になって読むとその面白さがよくわかる。

クリスティの作品はたとえ殺人事件が起こるまでが長かったとしても、人間描写の巧みさによって飽きる事なく読み進める事ができるのだ。むしろそこが大きな魅力である。

おそらく子供の頃は「殺人がなかなか起きない」という理由で楽しめなかったのだろう。もったいない!

とにかく人間心理の面白さ、というものを堪能していただきたい。「本格推理小説」ではなく「クリスティの小説」としての傑作というわけだ。

11.『火曜クラブ』マープル


名探偵エルキュール・ポアロに次いで有名な〈ミス・マープル〉の活躍を描く13編からなる短編集。

ミス・マープルという物静かでキュートなおばあちゃんが、現場を見ず情報を聞いただけで事件の真相を突き止めるという〈安楽椅子探偵〉ものの名作である。

そしてこの『火曜クラブ』こそ、ミスマープルの初登場作品なのだ。

もちろん、ただ「初登場作品だから」という理由でオススメしているわけではない。クリスティの作品を見渡した中でも、単純に素晴らしい傑作だからである。

ミスマープルの面白さが全て詰まっている、と言ってもいい。短編であるぶん読みやすいし、テンポも良い。それでいて伏線もトリックも上質であり、「見せ方」がうまい。面白くないわけがないのだ。

12.『鏡は横にひび割れて』マープル


続いてもマープル。長編である。この作品がマープルの最高傑作と呼ばれることも多い。

あるパーティの最中に一人の女性が毒殺された。飲み物に毒が仕込まれていたのだ。

しかしその飲み物は本来、同じパーティに来ている有名女優が飲むはずのものだった。つまり犯人は女優を殺すはずだったのに、手違いで関係ない女性が死んでしまった?という話。

なんといっても見所は〈ホワイダニット〉。つまり動機である。これに特化した物語と言っていい。

そのためストーリーは他の作品と比べても地味な印象を受けるが、面白いことに間違いはないので安心して読んでいただきたい。

動機にたどり着くまでに淡々と物語は進み、終盤で動機がわかった時の「うおお!」という衝撃。それを論理的に導いていくマープルには流石というしかない。

クリスティだからこそ書けた物語なのだ。

13.『予告殺人』マープル


ある日、新聞に「○月○日に○○で殺人がおきます」と殺人の予告が載った。誰もがイタズラだと思ったが、なんと本当に殺人が起こってしまう。

というワクワク設定なミスマープルもの。

もちろん設定だけでなく真相もお見事。あのトリックは本当に素晴らしかった。読み終わった後、もう一度最初から読み直してしまうことだろう。

なぜ犯人はこんな予告をして、なぜ殺人を犯したのか。という点にも注目だが、クリスティの作品は人間と情景の描写も素敵なんだよね。

ミステリ部分だけでなく、ぜひそんな所も楽しみながら読んでいただきたい。

14.『ポケットにライ麦を』マープル


マザーグースになぞらえた見立て殺人を描くマープルものの名作。今作を「マープル最高傑作」にあげる方も多い。

アガサ・クリスティでマザーグースといえば『そして誰もいなくなった』が有名であるが、作品の面白さでいえばこちらも負けてはいない。

そもそも今作は「マープルもの」として面白いのであって、完全な本格ミステリである『そして誰も』とは楽しみ方が違うのだ。比べるものではない。

かつて可愛がっていた娘が被害者になったことで、温厚なマープルに静かな怒りが芽生える点にも注目。

なぜマザーグースの通りに殺されたのか?という理由付けもしっかりしており、小粒ながら質の高いトリックをお楽しみいただけるのだ。

15.『検察側の証人』


法廷ミステリーであり戯曲ものの傑作。※戯曲とは、脚本のように書かれた作品のこと。

「法廷ミステリって微妙。退屈そう」「戯曲ものって読んだことないな」という方にこそぜひ読んでいただきたい作品である。

戯曲という特殊な形式に最初は戸惑うかもしれないが、読んでいればすぐに慣れる。だってめっちゃ面白いんだもの。

内容はいたってシンプルであり、文庫にして200ページちょっとの短さなので読みやすいことこのうえない。劇中で交わされる会話も素敵だし、まるで舞台を見ているかのようにその情景が目に浮かんでくる。

そしてなんといっても終盤の怒涛のどんでん返しが見事すぎるのだ。二転三転してあの着地とは。ああ面白い。

16.『そして誰もいなくなった』


クリスティの中で一番好きな作品。

孤島に集められた10人が次々と童謡に見立てられて殺されていく、というクローズドサークル&見立て殺人を描く。

クリスティの代表作の一つであり、ミステリー小説がお好きなら必ず読むべき作品である。

登場人物の心理描写、サスペンスに溢れるストーリー展開、伏線の仕込み方、驚愕の犯人。すべてにおいて一級品なのだ。

その影響力は偉大であり、綾辻行人さんの『十角館の殺人』や西村京太郎さんの『殺しの双曲線』などの傑作も『そして誰もいなくなった』をオマージュして書かれたものである。

あまりに有名なため、思わぬところでネタバレに遭遇してしまう事があるので気をつけよう。この作品を読む前に真相を知ってしまうほど悲しいものはない。

絶対に自分の目で読んで真相を知るべきである。

これに有効な対策はただ一つ。ネタバレに遭遇する前にさっさと読んでしまう事だ。

17.『終わりなき夜に生れつく』


クリスティが得意とする〈恋愛&犯罪〉の組み合わせが存分に生かされた作品。

呪われた地として恐れられている〈ジプシーが丘〉にまつわる事件を描いたものだが、いわゆる「本格推理小説」として読むものではない。

何しろ中盤を過ぎるまで事件は起きず、普通の恋愛小説かと思ってしまうほどだ。しかしその分、恋愛小説からミステリ小説への切り替わりが見事なのである。

とにかく物語そのものに酔いしれよう。悲壮感が漂う雰囲気にウットリし、引きずり込まれ、最後に「うわああああ!」となる。

クリスティ作品の中でもそれほど知名度は高くないが、間違いなく傑作の部類なので安心して読んでいただきたい。

18.『春にして君を離れ』


なんとこの作品は推理小説ではない。

ポワロもマープルも登場しなければ、殺人事件も起きない。ある意味「異色作」である。

という予備知識があったため、クリスティにハマった当時の私はこの作品を読むことを先延ばしにしていた。推理小説を読みたかったのだ。

しかし、時を開けてこの作品を読んだ時に非常に後悔をした。「なぜもっと早く読まなかったのか」と。

明らかに傑作であった。クリスティの作品をほぼ全部読んでしまった今もなお、好きな作品のベスト5に入る。

殺人よりも怖いもの

子育ても一段落し、ようやく落ち着きを得た婦人が旅行中に足止めを食らってしまう。

そんなキッカケを元に、婦人が自分の人生を見つめ直していく、という物語である。

私はいい妻だ。良い母親だ。家族はみんな幸せであり、私も幸せだ。

と、今までは思っていた。

しかし、本当にそうだろうか。

自分を疑うという怖さ。これを見事に書き切ってしまうクリスティの怖さ。

そしてあのラスト。

下手なホラー小説よりよっぽど恐ろしい後味である。

おわりに

というわけで、私がアガサクリスティの作品で特にオススメしたいのはこんな感じ。

他にも面白い作品はあるけど、ここらへんの名作はぜひ優先的に読んでいただきたい。

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